カマドの話

あるお寺に伺った際、庫裏でこんなカマドを見つけました。
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裏側
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商標「三和かまど
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この「三和かまど」は、田原商店が昭和10年に特許を取得し、
製造販売を開始したようです。

このようなカマドの原型は、
実は宇都宮三郎が明治16年に発表した「築竈論」(ちくそうろん)にあります。
「築竈論」は、おそらく日本で最初にカマドの造り方を論じた書だと思います。
この論文は最初、福沢諭吉が創った「交詢社」(こうじゅんしゃ)という日本最初の社交団体の会報「交詢雑誌」に119号から122号にわたって掲載されたものを、合本にして1冊にまとめたものです。
交詢社から希望者に対して1冊8銭で頒布されました。

内容は、
従来のカマド(直火式のクド)に対して燃料を半分から1/3に減らせる
「改良カマド」の基本的な考えと造り方を説いたものです。
カルマルス氏の熱理論を応用し、宇都宮三郎の実地経験に基づいた理論とされています。
いわゆる「実地経験、学理応用」ものです。
カルマルス氏については?です。

築竈論の中の図面の一つ(3つ口用)
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釜の数は1つから3つまでの種類があります。
また煙突の形状やつける位置が異なる種類も図示されています。
そのほか、同じ構造で釜の大きさによってカマド自体の大きさも変えられるように、
釜とカマドの大きさの比例寸法が一覧表になっています。

3つ口用の断面図
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このカマドの要点は、煙突と焚き口に格子状の火床を設けることにより、
小さく少ない焚き口でも熱が効率よく導かれるようにしている所です。

刊行された「築竈論」合本の裏表紙に掲載された
「改良竈」の広告です。
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こうしたカマド、昭和30年代頃までは土間のあるお宅では普通にあったように思います。

当時の新聞記事によると
改良カマドは、偽の築造者も出るほどの好評を得たようです。

家庭用はもとより、
たくさんの燃料を使う醸造業では改良カマドの効果は絶大で、
実際に北海道の魚粕製造業者からは
改良カマドの効果によって経費の節約ができたとして
感謝のメダルが宇都宮三郎に贈られています。

また、後の『醸酒鍼法』につながる愛知県知多亀崎の酒造家たちとの交流も、
カマドの指導から始まりました。
現在でも、明治以降に造られた醸造家のカマドは
「築竈論」を基に造られた宇都宮式の改良カマドです。

酒造業のカマド
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今は別にボイラーが付けられていますが、
もともとはレンガ造りの宇都宮式改良カマドです。

築竈論の発表は、特許制度に先立つこと2年。
宇都宮三郎はカマドでの特許を取得していません。
もし特許制度があったとしても、彼は特許をとるなど考えもしなかったでしょう。
この改良竈を造る「竈改良舎」も宇都宮三郎の経営ではありません。
もし特許を取得していれば、もし自分で会社を興していれば、
宇都宮三郎はそれこそ大もうけできたであろうに・・・
まったく金銭に欲がない忘我の男です。

この「私」のなさは、武士階級出身によるのか
生まれ育った時代によるのか、または全く個人の資質なのか、
これまた調べてみると面白いかもしれません。

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この記事へのコメント

水口栄一
2020年09月14日 21:44
三和かまどの記事を興味深く読ませて頂きました。我が家は以前、三和かまどの代理店をしていました。私の祖父が始めたのですが、北大阪で三和かまどのお仕事をさせて頂いたということです。

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